今日は、高次脳機能障害について解説したいと思います。
私たちの施設では病識を持ち、しっかりとした対応により症状を見守りながら介護を行っております。

高次脳機能障害は、脳血管障害や(転落や交通事故による)頭部外傷などによって、脳が損傷を受けることが原因でおこります。

高次脳機能が障害されると、高次脳機能障害といわれる状態になります。

高次脳機能障害について(1)

では高次脳機能とは何かというと、“高次な、脳の、機能”のことかと思います。たとえば、言語、認知、記憶、注意、行動を計画する、状況を判断する、感情、創造、思考など ・・・‘こころ’がはたらいていると感じるような部分です。

高次脳機能障害について(2)その症状は多岐にわたり、脳の損傷部位によって特徴が出ます。これにともない、性格が変化・疲れやすくなる等の症状が出ることもあります。

損傷が軽度の場合は、MRIでも確認できない場合があり、PETという特別な機械でなければ正確な診断はできません。

その障害は、外部から見た場合でも分かりにくく、当人の自覚症状も薄いことが多いため、隠れた障害と言われています。

高次脳機能障害について(3)

具体的な関わりの方法としては以下のような対応が必要になります。

●追い詰めない
障害された機能の回復を目指して訓練するのがリハビリです。しかし、現在の医学では脳細胞を再生させることは困難で、訓練によってある程度の機能回復は望めても、生活面の支障は大きく残る事が多いのです。
また、訓練により機能回復を図っても、それが進まないと本人を追い込んでしまうことになる場合があるので注意が必要です。

●代替手段を身に付ける
むしろ、失った機能の代替手段を使えるように援助したほうが効果的と言えます。代替手段とは、脳の機能を他の手段で置き換えること・・・例えば、記憶に問題があるのなら、メモの利用を利用することなどが考えられます。

●単純な環境作り
環境を分かりやすくシンプルに整えることも大切です。例えば、入院中の本人の持ち物が多くても管理することができないのです。

●用件は一つずつ
一度に二つ以上の要求を伝えても、混乱して時にはパニックになってしまうので、用件は一つずつ伝えることです。書いたメモを利用できれば、複数の用件を伝 えても実行可能です。言葉だけに頼らない予定や作業の手順などは、言葉で伝えるだけではなく、文字に書いて示したり、絵や写真で手順を示すことで混乱が少 なく分かりやすくなります。記憶障害への対応記憶能力自体を回復させることはなかなか難しいので、それに変わる手段を身につけることなどを目指します。

●記憶の外在化
記憶すべきことをメモなどに残し、利用することを習慣化する。その人にあったノート、メモなどでスケジュールや作業手順を記録して記憶障害を補う。

高次脳機能障害について(4)●生活の記録も習慣化する。
行動のパターン化習慣化できる日課は一定のパターンをつくり、その流れに沿って行動できるようにすることで、日常生活をスムーズにすることが大切です。
身の回りをシンプルに本人が管理するものを減らすことで管理しやすくします。
置き場所を変えない物の置き場所を一定にすることで容易に探せるようにする。

●注意障害への対応注意障害への対応
集中力が低下している人に対しては、作業時間を短く、休憩を多くして容易に課題が達成できる段階から練習してもらうことが必要です。
はじめは、課題を限定して繰り返し練習してもらったり、完成に近いところから始めて達成感や完成イメージが持てるように支援します。

●指示はひとつ
同時に複数の指示をしないようにします。ひとつづつならできることでも、いっしょに指示されると混乱して優先順位をつけられないため結局はとりかかることができなくなります。

●注意を引くための工夫
ことばがけをして、注意を喚起したり、注意すべきポイントをわかりやすく示す工夫をします。

●物理的環境づくり
雑音や他の人の会話や動き、作業と関係ない道具などが見えるところにないような気が散らない環境づくりを行います。

●心理的環境づくり
ストレスを受けてイライラした状況や、緊張した状態では普段にも増して注意集中が困難になるので、情緒的安定を図り、落ち着つける環境作りを心がけます。
遂行機能障害への対応遂行機能障害への対応、行動の取りかかりが悪くなったり、段取りよく生活や仕事を進めることができなのですが、見過ごされやすい症状なのできちんと診断した上で対応を考える必要があります。

高次脳機能障害について(5)●周りからの促し
自主的に行うのをただ待つのではなく、きっかけを作る必要があります。
行動を事前に言語化するいきなり行わせるのではなく、どうするのか表明してもらうことが有用です。

●課題の単純化
一連の取り組みのプロセスを小さな単位に分けた課題として取り組んでもらうようにします。

●作業手順の明確化
何をしたら良いかを、視覚的な手がかりを中心に分かりやすく示すことが大切です。社会行動障害への対応社会的行動障害への対応
本人の社会生活を営むのに必要な対人スキル(能力)が阻害されていることをまず理解することが大切です。

●感情のコントロール
まず本人のストレスを減らすことが大切です。復学や復職を急がせたり、するべきこと(課題)を多く提示すると不安定になります。時にはカウンセリングや薬物療法を行う必要があります。

高次脳機能障害について(6)●沈静化とフィードバック
感情爆発時には場面を変え、刺激の少ない環境の中で沈静化を待ちます。その後、状況をフィードバックし、適切な行動を示します。

●欲求のコントロール
行動の枠(約束事)を書いて明示し、チェックしていきます。

●意欲・発動性の喚起
毎日の日課を決めて示します。実現可能な小目標を定め、成果が目に見えるようにすることが大切です。本人が興味を持てる活動や、体を使うことからはじめるのがよいでしょう。

●抑うつへの対応
うつ病による意欲の低下などにはうつ病の治療が最優先です。不適応感が強いので、本人の訴えに耳を傾け、受け止めることや、混乱状態を整理する役割の人も必要です。

●生活能力回復への支援
訓練の成果が、日常生活の中で現れることが大切です。高次脳機能障害は、脳がまわりの状況を知る情報処理の機能が低下した状態です。実際の生活場面では、さまざまな情報をつぎつぎと脳が処理しなければならないので、訓練場面とは大きく異なります。

●生活能力回復プログラム
実際に交通機関を利用したり、買い物の練習を行います。単純な条件から、複雑な状況に慣らしていきますが、行動スケジュールや、メモなどの補助手段を有効に利用します。

●健康管理
本人が自分自身で健康管理(食事の時間、服薬、規則正しい生活など)ができるような支援も必要です。

●仲間づくり
同じ障害を持つ当事者同士が悩みを話し合ったり、余暇活動を行う取り組みも有意義です。

『私たちはプロとして、その人の体調や御病気に合わせた介護を行います。』

ご自宅での対応が大変になり、施設入居に至った経緯もございました。
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